東京薬科大学薬学部 薬学教育センター長 加藤哲太
セルフメディケーション時代
現代の社会では、食生活の変化や近代社会のストレスなどが関与するといわれている、アレルギー性の疾患や生活習慣病の増加が注目されています。高齢化が進むと、当然退行性疾患も多くなります。身体をこのような疾患から守るために、「セルフメディケーション」の考えが必要となります。
世界保健機構(WHO)は、平成12年に「セルフメディケーションとは自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調(minor ailments)は自分で手当すること」として、医薬品使用についてガイドラインを示しました。
厚生労働省では、セルフメディケーションにおける一般用医薬品のあり方について「一般用医薬品承認審査合理化等検討会」において検討を重ね、平成14年に中間報告をまとめました。http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/11/s1108-4.html
その中で、医薬品の使用者としての国民に対して求められることおよび医薬品の専門家として薬剤師に求められることを次のようにまとめています。
○使用者である国民に求められること
一般用医薬品が適正に使用されるためには、一般用医薬品の使用者である国民が、自己責任の自覚を持つことが先ず求められる。そのためには、日常の健康管理に努め、かかりつけ医師、かかりつけ薬局を確保し、適切な情報の収集に努め、さらに一般用医薬品の使用に当たっては、以下のことに留意する必要がある。
(1) 購入時、薬剤師等に相談する
(2) 添付文書をよく読み理解する
(3) 得られた情報に基づき適正使用に努める
(4) 有害事象が発生した場合は、薬剤師等にその旨を伝えるとともに、必要な場合は
早期に受診する
○薬剤師等の役割
薬剤師等は、医薬品の専門家として地域の中で国民の医薬品に関する相談等に応じることにより、一般用医薬品の適正使用に際して、その信頼性を高めることが求められている。そのためには、次の役割を果たすべきである。
(1) 一般用医薬品の適切な選択及び使用法・保管法等の相談応需
(2) 一般用医薬品を使用する人の自己の健康状態に対する理解度や症状等を考慮し
た医薬品使用の可否判断と必要に応じた受診勧告
(3) 市販後調査(PMS)への協力を含む使用後のフォローアップ及び使用実態試験
(AUT)への参画
(4) その他、健康増進・疾病予防活動( 健康日本21等)や健康教育への協力、療養
環境等の保全(衛生害虫対策を含む)等
一般市民の「健康管理」と薬剤師による「健康支援」を両輪として、薬剤師の指導のもと正しく薬が使用されたとき、より良いセルフメディケーションが実現すると考えます(図1)。
図1 より良いセルフメディケーションの実現
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